科学者がテロに対して、武力ではない平和的な解決策を提案──ハフィントンポストのインタビュー

テロは、武力や暴力によって防ぐことができない深刻な問題だ。先日、科学者のグループがテロに対して平和裏のうちに解決する科学的な手法をニューヨークタイムズ紙上で提唱した。

ハフィントンポストでは、この科学者グループのリーダーであるジョン・ヘーゲリン博士(量子物理学者)にインタビューを行い、彼らの意見の詳細を掲載している。以下は、その記事の抄訳。

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政府は、予測できないテロ攻撃に対し、何とか解決策を見出そうと多大な努力を続けているが、十分な成果を発揮していない。そうした状況を懸念した科学者たちの国際的な連盟が、実現可能な解決策を提案している。

「平和のための科学者の世界連盟」は最近、オバマ大統領、オランド、プーチン、そして、すべての国の指導者に対する声明を公に発表した。そして、武力や暴力によって平和を生み出そうとする従来のやり方に代わる科学的な手法を提案している(国際ニューヨークタイムズ、2015年12月3日)。

以下のインタビューで、「平和のための科学者の世界連盟」の代表者である量子物理学者ジョン・ヘーゲリン博士は、この新しい手法に関する質問に答えた。

※ヘーゲリン博士はハーバード大学で博士号を取得後、セルン(欧州原子核共同研究機関)とSLAC(スタンフォード線型加速器センター)で先駆的な研究を行い、超ひも理論に基づく大統一理論の構築に重要な役割を果たしてきた。彼の科学的な貢献として、物理学で最もよく引用される参考文献のいくつかを上げることができる。

 
──タイムズ紙に掲載された声明文によると、テロ攻撃の根本原因とは社会の根深いストレスであると説明されていました。それについて、簡単にお話ししていただけますか。

ヘーゲリン博士:戦争勃発の第一段階は、社会の中にストレスが高まることです。それは、紛争解決の分野における大多数の専門家の一致した意見です。世界中の紛争地域に見られるグループ間の対立は、深刻な政治的、民族的、宗教的な緊張を生み出します。そうした緊張が、そのまま増大し続けると、ついには臨界点に達し、否応なく社会的な暴力(犯罪、戦争、テロリズム)となって現れます。もし、それらが現れる前に、少しでもこうした社会の緊張を和らげることができれば、それらが突然、社会的な暴力となって噴出することはありません。水は、摂氏99度では沸騰しないのと同じです。

『集合意識』は、社会を形作るすべての個々人の意識の総和を意味する言葉です。ストレスのたまった個々人は、ストレスのたまった社会、ストレスのたまった集合意識を生み出します。そして、ストレスのたまった社会の中に住むすべての人が、そうした社会のストレスを感じています。このように、ストレスは、ストレスそれ自体によって、さらに増していくのです。

これまでに発表された数多くの研究によると、ストレスを軽減する効果が認められている瞑想法を個々人が実践することで、個々人のストレスが解消されると同様に、人口の一部分の人々が(1%でも)そうした瞑想法、特に超越瞑想(TM)を実践することで、社会のストレスさえも軽減することがわかっています。その結果、暴力犯罪、精神科の緊急電話、その他の深刻な社会的ストレスの指標が減少することが確かめられています。

さらに、超越瞑想とその上級テクニックを大人数のグループで実践することで、さらに強力な社会的効果が生み出されることがわかりました。世界中のテロ行為や中東における戦争について調べた複数の調査によると、特定の地域で人口のわずか1%の平方根の人々がグループで瞑想することで、あらゆる地域で社会的な紛争を効果的に予防したり、軽減できることがわかりました。(こちらは、そうした研究の概略)。

社会で最も暴力的な人々、たとえば犯罪者やテロリストなどが、こうした瞑想を実践する必要はありません。社会が落ち着いていくにつれて、彼らも落ち着いていくからです。なぜなら、彼らの狂信的な行動の根本原因となる社会のストレスが減少するためです。このことは、何度も確かめられてきました。これが、いま私たちが提案している新しい革新的な手法であり、その効果は広範囲にわたって証明されています。
 

──なぜ、この解決策は、他の方法よりも効果的なのでしょうか?

ヘーゲリン博士:紛争を解決するための従来の方法は、あまりにも表面的です。社会における政治、宗教、民族間の緊張の増大が、戦争の根本原因なのですが、従来の方法は、それらを扱うことがないため、単なる一時しのぎにすぎません。政治的な調停や協議によって条約が定められても、それらは単に書類に書かれたものであり、あまり価値がないことを歴史は示しています。これまでの歴史を見てみると、条約というものは、短い期間しか存続しません。なぜなら、長年にわたって敵対し合う人々の心に内には、復讐に対する強い欲求や根深い緊張があるからです。条約を結んだからといって、それらを和らげたり、取り除くことはできないのです。
 

──これまでに、こうした手法を試したことはありますか。その効果は、科学的に調査され、証明されているのですか。

ヘーゲリン博士:その効果を調べる公開実験が50回以上も行われ、査読のある一流の科学誌に23の科学的研究が発表されてきました。1980年代の初めから、中東において少なくとも7回の公開実験が行われ、毎回、平均80%も戦争による死傷者数が減少し、対立するグループ間において平和に向けての有意義な進展が見られました。こうした瞑想の専門家による大規模な平和推進グループを維持するために、これまで政府の支援が得られなかったことは、残念なことです。

戦争を予防し、社会の平和を高める手法は、これまで存在しませんでした。この平和を実現するための意識や脳科学を基盤とした根本的な手法は、厳密に調査され、実用的であることが確かめられています。
 

──テロ攻撃に対する従来の手法は、遅かれ早かれ失敗すると思いますか?

ヘーゲリン博士:歴史の記録は明白です。たとえば、中東を見てみれば、何百もの平和条約は、実際に平均わずか2~3カ月しか長続きしないことがわかっています。政府の代表者による和解は、一般大衆の集合意識に内在する根深いストレスを直接扱うことはないからです。

武力によって平和を生み出そうとする試みは、莫大な費用がかかるだけでなく、人の命が失われ、苦しみや悲しみが残るという多大な被害を伴いますが、それにも関わらず、平和を長続きさせることはできませんでした。たとえば、イラクでの戦争を見てください。たいていの場合、政治的に不安定な地域への軍事介入は、緊張をよりいっそうあおるだけです。
 

──あなたが先ほど述べていた兵器よりも強力な「平和を生み出す技術」について説明していただけますか?

ヘーゲリン博士:社会の調和と平和を長続きさせる上で、武器はあまり役に立ちません。武力による制圧は、他によい方法が見つからない場合の型どおりの反応です。歴史を見ても、そうした方法は平和を維持することも、よい結果を生み出すこともないのですが、そのことに気づいていない人々は、そうした方法を好みます。第一次世界大戦は、「すべての戦争を終えるための戦争」のはずでした。しかし、戦争の結果、敗戦国は壊滅状態になり、それによって生み出された屈辱感は、必然的に第二次世界大戦を引き起こします。ですから、私たちに必要なのは、暴力の根本原因を取り扱い、それを取り除くことのできる、より革新的で、より強力な方法です。
 

──非常に多くのイデオロギーの対立や派閥争いがある中、すべての党派が互いに和解し、それぞれの望みをかなえる方法があるのでしょうか?

ヘーゲリン博士:人々が本当に望んでいるものは、戦闘によっては得られません。人々は、平和を望んでいます。繁栄、安全、幸福を望んでいます。戦争が生み出す国土の荒廃は、それらをもたらすことはありません。暴力を通して平和を実現することはできません。人を殺すことで、幸福を得ることはできません。その代わりに、戦争の後にまた戦争が起こるという、戦争の繰り返しが永遠に続くだけです。もし平和を望むなら、社会の集合意識の中に平和の質を高めなければなりません。もし幸福を望むなら、集合意識の中に幸福を広げることです。数多くの研究が、超越瞑想によって、平和と幸福の両方が増すことを示しています。
 

──それをより早く実現するためには、何が必要ですか?

ヘーゲリン博士:ありがたいことに、ほとんど何もする必要はありません。どのような政府の管理機関でも、個々人のグループに超越瞑想を学ぶ資金を提供するだけで、国民の安全と快適さを守ることができるのです。たとえば、軍事基地の軍隊、陸軍士官学校や大学の学生、失業中の市民グループ、難民のグループが、そうした技術を習得することができます。平和のための科学者の世界連盟は、人々が適切な指導を受けることができるように準備をします。その影響は、すぐに、数カ月のうちに感じられるでしょう。

また同時に、適切な研究を行って、政治家、政策立案者、市民に、その効果を調査し、研究論文を公開することをお勧めします。それによって、人々は満足と恩恵を得ることになるでしょう。

こうした手法を採用し、その結果を見てみたいと思う、政府の代表者や民間の慈善家の方がいましたら、ぜひご連絡(英語)ください。(日本語でのお問い合わせはこちら)

Source:
Scientists Propose “Peace-Promoting Technology” To Counter Terrorism: An Interview With Quantum Physicist John Hagelin (Jeanne Ball)