社会に還元するために超越瞑想が再び戻ってきた──フォーブス

社会のさまざまな問題を解決するために設立されたデヴィッド・リンチ財団のイベントが開催され、その様子をフォーブス(forbes.com)のアリス・G・ウォルトンが伝えている。以下はその記事の抄訳

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最近、超越瞑想が人気をとり戻している。多くのセレブ、ビジネスマン、一般の人々がTM(超越瞑想の略)を実践し、その数はこれまでになく増えている。先日、TMの代表的なNPO法人であるデヴィッド・リンチ財団が、ニューヨークでイベントを行ったところ、アリアナ・ハフィントン、ロビン・ロバーツ、シンシア・マクファダンといった著名人らが、TMによって人生が変わったと話していた。ストレスがピークに達し、イライラしていた彼女たちに何が起こったのかという話は感動的だ。今では、多少のストレスはあっても、少なくとも穏やかな心を保ち、バランスを取ることができるようになったという。しかし、デヴィッド・リンチ財団の目標はもっと大きい。子供たち、家庭内暴力の被害者、帰還兵、囚人たちにTMを教えることで、彼らがトラウマを克服し、満足のいく人生を取り戻せるように助けようとしている。それはやりがいのある目標だ。

TM運動そのものは、過去に何度か壁にぶつかったことがある。TM運動は1950年代に、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーが起こした運動で、ビートルズがそれを「発見」し、宣伝したことで人気が高まった。ギャラップ世論調査によると、70年代後半には、アメリカ人の4%がTMを実習していたという。その後、TMの人気は揺らいできて、カルト的なものではないかと思われ始めた。しかし、この10年くらいで、TMは人々の敬意や賞賛を取り戻した。世界的に非常に著名な人々を含めて多くの人々が、内側に静けさを見いだすこのシンプルで直接的な方法を求めて、また集まり始めたからだ。

瞑想がビジネスに役立つという話は、今では、あらゆるところで耳にする。しかし、アリアナ・ハフィントンが、愛情をこめて語った話は衝撃的だった。疲労のために、彼女は自分のオフィスで倒れ、血だまりのなかで意識を取り戻した。彼女はこう語っていた。そのとき初めて、お金と権力は、三本脚の椅子の内、二つの脚に過ぎないことに気づいたと。そして、瞑想のようなセルフケアこそが、重要な三本目の脚になると述べた。最近では、従業員に瞑想を勧める企業が増えている。グーグル、ターゲット、ナイキ、エトナ、ゴールドマンサックスは、彼らの企業文化に瞑想を取り入れて、従業員に瞑想を教え、実習のための時間と場所を提供しているのだ。

しかし、デヴィッド・リンチ財団が熱心に取り組んでいるのは、TMという精神的な支えを、それを最も必要としている人たちに与えることだ。現在は、帰還兵、学生、囚人、家庭内暴力を受けている女性や子供たちに、安い費用で、あるいは無料でTMを教えている。

しかし、TMだけが、こうした人々を助けようとしているわけではない。ヨガ、マインドフルネス、他の瞑想法なども、よく知られた手法として、実践する人が増えている。デヴィッド・リンチ財団の理事長ボブ・ロス氏はこう話していた。TMにはシンプルで力強い何かがあり、それは特に、感情の起伏の激しい人々を癒やすのに適している。恐らくTMの最大の利点は、他の手法と比べて短期間で学ぶことができ、簡単に習得できる、ということだろう。結果を得るまでに、何週間も、何カ月も待つ必要はない。TMはすぐに効果を発揮する。数日、人によっては数分間で、苦しく耐えきれない考えから解放されるのだ。

デヴィッド・リンチ財団理事長のボブ・ロス氏

 
「TMでは、マントラ(意味のない言葉)を教えてもらい、その使い方を学びます。」とロス氏は話す。「TM中、活発に考えている心は、努力なく、内側の静かな状態へと落ち着いていきます。意識を集中させる瞑想法のように雑念を追い払おうとしませんし、ヴィパッサナーやマインドフルネスのように、考えを観察しようともしません。もっと簡単なものです。TMは、意味のない音またはマントラを用いますが、それはざわついた思考が落ち着いて静まっていく過程を経験するための乗りものなのです。」

古典的な二つの瞑想法として、サマタ瞑想のように何かに集中する方法と、マインドフルネスやヴィパッサナーのように観察する方法がある。一般的に、それらの方法は習得するまでにより長い期間、実習を行う必要があるという。集中する方法では、マントラや何らかの対象に意識を集中して、さまよう心を何度も何度も、その対象へと引き戻そうとする。観察する方法では、自分の考えを少し離れたところから、好奇心をもって観察していき、最後にはそれを失う。普通は、最初に集中する方法を学び、次に観察する方法を学ぶことになっているが、最終的には、その両方が互いに調和して、補う合うような形で実習が行われるようになる。

こうした瞑想法とTMとの違いを、ロス氏は海の例えを使って説明する。ざわついた心は、海の表面にある30フィートの波の様だ。意識を集中する方法は海の表面で波を止めようとし、観察する方法は波がどこかにいってしまうまで、それらを観察しようとする方法だ。それに対して、TMは波の内深くにある、より静かな海の深みへともぐっていき、完全に静かで至福に満ちた状態を体験するのだという。「TMは二つの古典的な瞑想法とは違う、第三の瞑想法です。TMでは、何かに集中したり、考えを観察したりしなくても自動的に超越していきます。TM中、脳に特定のアルファ波が現れますが、それは『安らいでいながら、目覚めている』という独特の状態を示しています。」

TMの実践は、多くの人たちを助けているようだ。ロス氏によると、デヴィッド・リンチ財団はこれまでに、世界中の50万人の子供たちに瞑想を教えてきた。そして、5年以内に100万人の成人と子供たちにTMを教えたいと望んでいる。他にも、アメリカ中のファミリー・ジャスティス・センターを通じて、これまでに2000人の帰還兵や家庭内暴力の被害者たちに無料でTMを教えてきた。財団はさらに、それらの加害者にもTMを教えようとしている。リンチ財団は、TMを学びたいと望む、学校、ファミリーセンター、刑務所からの希望者のリクエストにすべて答えようとしているのだ。

「トラウマ性のストレスや有害なストレスを予防する特効薬はありません。錠剤で、そうしたストレスを取り除いたり、治すことはできないのです。」とロス氏はいう。「薬も多少は役に立つかもしれませんが、人によっては薬に依存するようになったり、あるいは、バンドエイドを張る程度の処置にしかならないのです。」それに対して、TMの場合は、ストレスに有効であるという確かな証拠があるという。TMによって、心臓血管系の病気が軽減したり、血圧が下がることが多くの科学的研究によって証明されている。「ストレスの問題はなくなることはありません。悪化していく一方です。」とロス氏は語る。「TMは、ストレスの多い毎日をうまく扱うための有効なツールです。私は懐疑的な人間ですが、TMの効果を信じる必要はありません。TMのことを疑っていても、それに熱心に取り組まなくても、効果は現れるからです。」

TMは誰にとっても効果があるという点で、他の瞑想法とは異なるとロス氏は語る。トラウマを抱える人であろうと、心の病をもつ人であろうと、自閉症の人でさえ効果を体験している。しかし、彼も認めているように、さまざまな瞑想法は互いに対立し合うものではない。「その効果が科学的に実証されているものなら、私たちは何でも支持します」と彼は言う。「もしヨガやマインドフルネスが有効であることを示す研究データが発表されれば、それらを利用すべきです。重要なことは、その結果です。TMは、心身に深いリラクセーションをもたらして、ストレスを減少させます。私は、TMだけをしなさいと言っているのではありません。効果のあるものを行ってくださいと言っているのです。」

Source:Transcendental Meditation Makes A Comeback, With The Aim Of Giving Back (Alice G. Walton)