魂にあいた穴を癒してくれたもの〜依存症から立ち直る

ジョーナはアメリカ南部出身の67歳の男性である。彼は若い頃からアルコールやドラッグの依存症であり、34歳のときに超越瞑想を出会って、薬物依存から抜け出すことができた。彼は依存症について知り尽くしていたため、それ以来28年間、薬物乱用カウンセラーを行ってきた。

彼の話は、依存症が彼自身と彼の家族にとって破壊的なものであり、超越瞑想が依存症からの回復にどのように役立つのかを表している。

「私は生まれつきの依存症の傾向があったようです。けっして満足できない。周りの人達の感情がひどく気になる。そうした傾向が、ドラッグを始める前からありました。依存症の根本原因は魂に穴があいているためではないかと思います。つまり、魂が病んでいるのです。そのために、何かを飽くことなく求め続けてしまうのです。その穴をアルコール、ドラッグ、セックス、何であれ、そうしたつまらない物で塞ぐと一時的には満足できますが、しかし状況はいっそう悪くなります。そうした薬物や行動はバランスを取り戻そうとする試みなのですが、しかしやりすぎて失敗します。抑制が利かなくなります。あるドラッグへの依存がなくなったと思ったら、別のドラッグへの依存に替わっていただけだったという人達を、私は何人も見てきました。

依存症がひどくなると、その人の人生がそれに乗っ取られてしまいます。誰だったかこう言った人がいます。『脳が何の相談もなしに勝手に決断し始めるんだ。』見張っている人が誰もいないのです。これ以上はダメだと、止めてくれる人が誰もいません。最初は止める人がいたとしても、依存症がその人をどこかへ連れ去ってしまうのです。

私が最初に使ったのはタバコでした。それが問題だとは思っていませんでした。その次はアルコールでした。アルコールを体に入れると、気分が良くなりました。私は酔っぱらって、意識を失い、問題を起こしました。私の依存症は15歳から始まって38歳まで続きました。23年のキャリアというわけです。

時々、一カ月から二カ月ぐらいの間、ドラッグなしでいることもありましたが、依存症はいつも頭のどこかにありました。次はいつ起こるだろうか? どうしたら隠せるだろうか? お金はどうやって得ようか? 誰かに見つかりはしないだろうか? このような考えが、いつも頭から離れません。このように、私たちは依存症によって今ここにある現実から引き離されてしまうのです。不安な感情がいつも心のどこかにあります。いつもどこか他の所に行きたい、他の何かをしたい、他の誰かと一緒になりたいと思っています。けっして満足できません。何かを手に入れたとたんに、もうそれには飽き足らなくなって、次の何かが欲しくなるのです。

そのような頭の中の絶え間ないつぶやきを、私たちは「気泡発生機」と呼んでいます。そのしつこい考えがあるために、私たちは疲れ果て、自然に備わっている防護壁も壊れてしまいます。薬物依存者の自助組織ナルコティックス・アノニマスの本によると、私たちがドラッグやその代用品に何度も引き戻されるのは、一度味わった気持ちよさをもう一度味わいたいという考えに取り付かれているからです。そうした考えがしつこく付きまといます。ですから、一度始めると、自分の自由意志ではやめられなくなるのです。何気なく何かを食べ始めると、それをいつまでも食べ続けるてしまうのです。

ドラッグとアルコールのために、私は自動車事故を少なくとも12回起こしました。父は私のことを「衝突屋」と呼んでいました。あるとき、私は正面衝突の事故を起こしました。緊急救命士達は私の脈が感じられなかったので、死んだものと思って私を放置していました。私は額にひどい傷を負い、助手席の下に気を失って仰向けに倒れていました。周りは血だらけでした。たまたま近所の人が通りかかって、事故を起こしたのは私の車だと気付きました。彼は私がまだ生きていると思って、自分の車に乗せて救急病院へ運んでくれました。今になって思うのですが、私を超えた何か大きな力が私を見守ってくれたのでしょう。もちろん、その当時は、助かったのは運がよかったからだと思っていました。

私は相手の車に乗っていた女性に大けがをさせ、一生不自由な体にしてしまいました。依存症だった当時の私は、彼女がけがをしたのは彼女の不注意のせいで、自業自得だと思っていました。今では、彼女だけでなく、私が傷つけた全ての人達に償いをしなくてはならないと思っています。今、私が一生懸命に他の人達の回復を手伝っているのは、そうした思いがあるからです。私は十年間、回復のメッセージをもって刑務所に通いました。もちろん、報酬は受け取りません。毎日、一人の受刑者を助けるたびに、過去の償いをしているのです。」

ジョーナは、断酒会に入会して間もない一九七三年に、テレビのマーヴ・グリフィン・ショーでマハリシを見て、すぐにTM(超越瞑想)を学び、それが気に入った。「私の依存症が全てなくなりました。タバコ、アルコール、マリファナ、セックス、全てが自然に消えていきました。」彼はTMの効果を次のように説明する。

「私はいつも繋がりを求めていました。そして、何か永続的でないものと繋がったときには、いつも失望して、腹を立て、飲んで酔っぱらいました。ところが、超越したときには、生涯ずっと求めていたものと繋がることができました。以前にはそれを相対的なレベルで求めていたのですが、今は心を意識の絶対的なレベルに導いていくことによって、絶対的なレベルでそれを見つけることができました。超越が私の魂にあいていた穴を癒してくれました。

でも、私はこの話の続きを話さなければなりません。その年の暮れのことです。ある金曜日の午後に家に帰ってみると、妻が子供達を連れていなくなっていました。私を残して、みんな出て行ってしまったのです。私は妻と子供達がどこにいるか探し当てたのですが、タバコとアルコールをまた始めてしまいました。依存症に逆戻りしたのです。それでも、瞑想は続けました。それは一九七四年のことでした。アルコールは、その三年後にやめました。一九七七年の六月二十四日からは一滴も飲んでいません。」

ジョーナの他の依存症も一つ一つなくなっていった。そして今は酒もタバコからも離れた独身生活をしている。子供達や孫達とも仲良くやっており、「信じられないくらい充実して豊かな」日々をおくっている。断酒会にも参加し続けている。断酒会の12のステップでは、アルコール依存からの回復を維持する手段として祈りや瞑想も奨励されているという。彼は規則的なTMを続けており、クライアントにもきまってTMを勧めている。「年を取るにしたがって、瞑想の時間を増やすようにしてきました。私ぐらいの年齢になると皮肉っぽくなる人が多いようですが、私は元気いっぱいで精力的に活動しています。」

原文:「超越瞑想 癒しと変容」より