健全な脳は、ストレスによって制限されない(2)

ADHDなど学習障害をもつ子供は、多くのストレスを体験している。彼らの脳はうまく働くことができず、ストレスによって制限されている。ところが超越瞑想を学習に取り入れた生徒は、半年ほどで学習障害を乗り越えていくことがわかった。以下は前回に引き続き、脳機能とストレスとの関係について語ったトラヴィス博士のインタビュー(「エンライトメント・ニュース」掲載)である。

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──ADHD(注意欠陥多動性障害)のような学習障害を持つ人々に対してTMは効果がありますか?

トラヴィス博士:あります。『Mind & Brain, the Journal of Psychiatry』に発表された2011年の研究では、TMはADHDと診断された子供たちに有益な影響を与えることが分かりました。この研究論文の共同執筆者はサリナ・グロスワルド博士とウィリアム・スティクスラッド博士です。この研究では、学習障害者のための特殊な私立学校に通っている10〜14歳の子供18人が被験者となり、TMをすぐに学ぶグループと、通常の学習活動を続けて3カ月後にTMを学ぶグループのいずれかに無作為に振り分けられました。

3カ月間のTMの実践は、脳機能および文字流暢性のテストの成績にかなりの影響を与えました。ADHDの特徴として、脳波図に高いレベルのシータ波(4〜8ヘルツ)活動が表れます。被験者が何かの課題(例えば、記憶する課題)に取り組んでいる間、関係のない情報を遮断するために脳は自然にシータ波を出します。ADHD児の脳には普通の子供よりも高いレベルのシータ波活動が見られますが、その結果として無関係の情報だけではなく関係のある情報まで遮断されてしまいます。そのような状態にある子供の名前を呼んだとしても、彼らはそれが聞こえないために反応を示しません。

またADHD児は、別の周波数帯であるベータ波活動が少ないという特徴もあります。ベータ波活動は思考および実行機能に関与しています。ADHD児はシータ波が多すぎ、ベータ波が少なすぎるのです。そのため彼らの脳は外部の物事を遮断してしまい、そして集中するのが困難になっています。シータ活動とベータ活動の比率(一方を他方で割った数値)がADHDの重症度を数量化するために用いられています。

事前検査では生徒全員が正常範囲の3倍高いシータ/ベータ比を示しました。3カ月後、TMを実践したグループはシータ/ベータ比が正常範囲に近づきました。そしてTMの実践を始めて6カ月後、TMグループはこの値が正常範囲の上限に達するまで下がり、脳機能が正常化したのです。(以前の記事参照

超越瞑想によってADHDの学生の脳機能を高め、症状を改善した研究データ

この研究では、ちょうど6カ月で、ADHDの生徒のうち瞑想している生徒の脳機能が、確実にADHDと診断される臨床症状から、正常な脳機能の範囲内にあると認められる状態に移行したことが分かりました。

ちょうど6カ月で、瞑想している生徒の脳機能は、確実にADHDと診断される臨床症状から、正常な脳機能の範囲内にあると認められる状態に移行したということは、実際的な言い方をすれば、彼らは身体的衝動と精神的衝動のどちらも自己制御できるようになってきている、ということです。例えば、彼らは話し始める前に手を挙げることができるようになります。

私たちは、同調度と呼ばれるもう一つの脳波測定値も調査しました。同調度とは、脳の各部分が協調的に機能している度合いを示す値です。研究開始時から6カ月目の事後検査まで、シータ波(内的な注意の集中)、アルファ波(自己感覚)、ベータ波(処理)、およびガンマ波(外的な注意の集中)の4つの周波数帯域で、脳のすべての部分の同調度が有意に増加したことが確認されました。すべての周波数帯域で同調度が増加したのは、様々なプロセスに関与する脳の各部分が協調的に機能しているからであり、その結果として子供たちは自分の行動を制御できるようになります。彼らの脳は、各構成部分が分離して機能するのをやめ、一つの全体として機能する度合いが高くなってきているのです。

脳機能の統合性の増大は彼らの認知機能に反映されました。TMグループは、多くの新しいアイディアを生み出す前頭葉の能力の尺度となる文字流暢性でも改善を示しました。

私たちの脳は絶え間なく変化しており、シナプス結合の70%が1日ごとに変化します。脳とは、岩のようなものではなく、河のようなものなのです。

──私たちがより成功した、ストレスのない人生を送れるようにするために、脳の機能について他にも知っておくべきことがありますか?

トラヴィス博士:何かの経験をするたびに脳は変化する、というのは誰もが知っておくべきことです。研究では、脳の結合の70%が1日ごとに変化することが分かっています。これは神経可塑性と呼ばれています。

細胞レベルでは、2つの神経細胞が同時に発火するとそれらの神経細胞は結合します。2つの神経細胞が発火したとき、細胞内のタンパク質がより多くの入力繊維と出力繊維の成長をサポートするので、軸索の直径が増大し、そしてその2つの細胞は刺激されて再び発火します。このプロセスは長期増強と呼ばれています。

それは絶え間なく続く皮質のダンスです。私たちの脳は河であって、岩ではないのです。私たちが人生で何かを経験するたびに、脳全体に活動のパターンが生み出され、それが私たちの経験の積み重ねになります。それと同時に、その経験は神経細胞間の結合の中にその跡を残します。マハリシは、私たちが注意を向けているものが私たちの生命の中でより力強く成長する、とおっしゃいました。そのようなことが脳の結合の物質的レベルで起こっているのです。

例えば、バイオリン奏者の場合、左手は音符を奏でる役割を果たしているので、左手に対応する脳の部分は、弓を持っている右手に対応する脳の部分よりも複雑になっています。ロンドンのタクシー運転手を対象とした別の研究では、道順を想定し、標識を識別し、道路工事でハイウェイが通行止めになっている時に道順をいかに変えるかを判断する思考過程の基礎となっている脳機構が増大していることが分かりました。

私たちが絶えずストレスを受けていると、逃走・闘争反応を発動させる脳の部分がより大きく成長するため、私たちは少しのストレスに対してもまるで生命が脅かされているかのように反応するのです。

しかし、ここが覚えておいてほしいポイントなのですが、私たちが超越の経験を日課の中に取り入れると、純粋意識の経験をサポートする脳の結合が強化されます。これが悟りへの成長の実際面なのです。それは超越瞑想を行うたびに毎日起こっています。


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