超越主義者──デヴィッド・リンチとイタロ・ズッケーリの情熱

最近、『Style.com』で、デヴィッド・リンチ監督とファッション・デザイナーのイタロ・ズッケーリ氏とのインタビューが掲載された。彼らにインタビューをしたマシュー・シュナイアーは、二人が共に情熱を傾けている「創造性と超越瞑想」に焦点を当てて話を進めていた。以下は、その記事からの引用文。

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マルホランド・ドライブから、そう遠くないハリウッドの丘の曲がりくねった道路に、荒っぽい感じだが、牧師館や銀行のように見えるコンクリートの建物が建っている。これが、デヴィッド・リンチが様々な仕事を行っている彼のスタジオだ。

映画製作者であるリンチは、映画、テレビはもとより、絵画、音楽、自己啓発本、コーヒー焙煎など、メディアを超えた仕事をしている。だからそこには、様々な種類の部屋がある。映像室、録音スタジオ、写真と美術作品のための保管庫、工業用エスプレッソ・マシーンのためのキッチンなど。(リンチの友人達は、その建物が「ロスト・ハイウェイ(1997年)」の頃からあると話していた)

私は、ファッション・デザイナーであるイタロ・ズケーリを伴ってニューヨークからここに来た。リンチが情熱を傾けている超越瞑想について話を聞くために。リンチ監督は、2005年、自身のNPOである「意識に基づく教育と世界平和のためのデヴィッド・リンチ財団」を創立した。彼の成功の多くはTM(超越瞑想)の実践のおかげであるので、彼は、他の仕事と同じように、TMの啓蒙のために多くの時間を捧げている。2006年に書かれた彼の本、「大きな魚をつかまえよう」は、TMに捧げられたものだ。

超越瞑想は古くからあるものだが、1968年にビートルズが20世紀のグルであるマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーの指導の下で、瞑想を学んだことにより、現代に蘇った。それは、宗教でも、信仰でも、信条でもなく、そのニューウェーブ的雰囲気により、大きく広まった。最近も新たなブームになっている。

「去年は、何かが起きました。」とボブ・ロス氏は言う。彼は、「デヴィッド・リンチの意識に基づく教育と世界平和財団」の感じのいいエグゼクティブ・ディレクターである。「何か特別なことが起きていました。私は最前線にいたのに、それを知りませんでした。しかし、何かが起こったのです。なぜなら、ニューヨークではTMを習いたいという人が増えて、教師の数が足りなくなったからです。」

TM運動の基盤には、健康的なファンであるセレブ達がいる。それが、デヴィッド・リンチ財団を支え、社会に利益をもたらしていることに疑いはない。この財団は、貧困層の子供達、家庭内暴力の被害者、軍人など危機的状況にいる人々でも超越瞑想を習えるように奨学金を提供している。

TM実践者であるポール・マッカートニーは、この財団のために初めてチャリティーコンサートを開催したミュージシャンだ。TM瞑想者であるヒュー・ジャックマンとジェリー・サインフィールドは、(昨年)12月に行われた一番最近のチャリティーに出席していた。マリオ・バタリとメフメット・オズは、2月に行われるイベントで講演を行うことになっている。マーティン・スコセッシも参加して話をする予定だ。支持者たちのリストは長い。エレン・デジェネレスもそうだ。オプラもそうだ。世界一大きなヘッジ・ファンドであるブリッジ・ウォーターの創設者レイ・ダリオもそうだ。ファッションの世界では、カルバン・クラインの紳士服部門のクリエイティブ・ディレクターとして10年目を迎えるズケーリも、長年TMを行っている。

TMは、比較的シンプルな実践だ。1日2回20分ずつ瞑想をする。瞑想中、サンスクリット語のマントラを静かに繰り返す。(マントラは超越瞑想の教師からもらわなくてはならない。それが、千ドル以上するインストラクションの一部である)

実践者は、TMがストレスを取り去り、気分を高め、病気を防ぐと言う。注目すべきは、その効果のほとんどが科学的に証明されていることだ。アメリカ心臓協会の調査は、過去に研究が行われた瞑想法の中で、超越瞑想だけが高血圧を下げる効果があることを明らかにした。別の調査でも、超越瞑想によって、鬱血性心不全の患者の身体機能が高まることがわかっている。これまで過去40年間にわたって、超越瞑想に関する300以上の研究結果が、論文審査のある医学ジャーナルに発表されてきた。また、アメリカ国立衛生研究所と国防省は、超越瞑想の更なる研究のために数百万ドルもの助成金を交付している。グーグルで検索すると超越瞑想に対する疑問や批判も見うけられるが(その多くは実習そのものよりもニセの実践者に対してである)、時の流れは今、TMを好ましいものとしているようだ。

「1968年頃は、瞑想は一時の流行でした。」とロス氏は言う。「2013年は、研究結果のおかげで、超越瞑想は実際に、我々の文化の一部分になっています。」

リンチとズッケーリが放射している気高い至福には、何か興味をひかれるものがある。リンチ監督の場合、彼の暗闇や暴力的な作品と至福との際立った対比が魅力的だ。私は、TMの実習と彼らの創造的な生き方との関係についてもっと知りたいと思った。以下は、彼らと自由に語り合ったインタビューの原稿を短縮して編集したものである。

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──今日、お聞きしたいことの一つは、創造のプロセスと超越瞑想との関係についてです。なぜなら、カルバン・クラインを別にして、それがお二人の共通点だからです。TMは芸術の分野で働く人達にとって何か特別なものであると思いますか?

デヴィッド・リンチ:まったくその通りです。これはアーティストだけでなく、人類全体にとって特別なものです。人々が今気づき始めていることは、全ての人類が、内側に宝物を持っているということです。それは常にそこにあります。それは永遠性のレベルです。TMは精神的なテクニックであり、心と理知の内側に飛び込んで、理知の境界を超越し、最も深いレベルを経験します。そこが宝物のある領域です。この領域には、たくさんの名前がつけられていますが、どんな名前か、ということは問題ではありません。量子物理学では、それを統一場と呼び、全ての物がその領域から現れると説明しています。もう一つの名前は、大文字で始まる「自己(Self)」です。「汝自身を知れ」という言葉がありますが、それは、私たちの最も内深くにある「自己」を知りなさいということです。TMは、そこへと至る扉の鍵を与えてくれます。それが、アーティストにとって一番重要なツールだと言えるでしょう。

イタロ・ズッケーリ:デーヴィッド、私はずっとあなたに憧れてきたファンの一人ですが、瞑想についてあなたが話していることはとても素晴らしいと思います。あなたの本を何回も読みましたが、本当に私が感動し、興味を持ったのは、平和を掻き乱す要素の上に美的価値を築くという点です。そのように言うと、穏やかな感じではないですが……。しかし、それこそが、あなたの仕事をいつも素晴らしいと思う理由です。あなたの表現方法で言えば、「不幸せな仕事をするために、不幸せでいる必要はない。」ということです。このことが、あなたと話したいと思った理由の一つです。

リンチ:肝心なことは、アーティストは苦しみを表現するために、苦しむ必要はないということです。アーティストは自分を追い詰めたがるものですが、それは怒りや憂鬱や不安が自分の仕事に必要だと思っているからです。一方では、それは本当です。しかし私は、怒りは人の心を占領する、ということに気づきました。常識で考えても、怒りに満ち溢れているときには、創造性を発揮する余地はありません。真の怒りというものは、人間と環境にとって有毒です。人は怒っている人の周りにはいたくないものです。ですから実のところ、怒りは仕事に必要ないといえます。否定的なものは、創造的な活動にとって敵です。私が言っているのは、怒りを理解すればよい、憂鬱さを理解すればよいということです。よく言われますが、死の場面を表現するために、本当に死ぬ必要はないのです。

──超越瞑想に対して懐疑的な人もいると思いますが、超越瞑想にはどのような効果があるのですか?

リンチ:人々はよく、もしTMが本当に簡単で努力がいらないとしたら、それはダイエット・コーラのようだ、ミッキーマウスの瞑想かもしれない、と言います。しかし、それは、いわゆるたわごとです。TMは、私たちに幸せをもたらしてくれます。TMで得られるマントラは、ある特別な目的のためにデザインされた自然の法則です。その目的とは、外側に向いていた意識を、180度変えて、内側へと向かわせることです。一度内側を目指せば、自然に、簡単に、努力なしに、そこへと潜っていくことができます。なぜなら、より深いレベルには、より大きな幸福があるからです。そして理知を通り過ぎます。より深い理知のレベルにはそれぞれ、より大きな幸福があり、そしてそれを超越します。なぜなら枠のない海は無限だからです! 果てしない幸福があります! あなたは、そこにとどまりたいと望むでしょう。そして、想念から離れ、もう一度そこに飛び込みます。それは大変素晴らしいことです。

──そうした体験を、どのようにファッションや歌やアルバムや映像といったご自身の仕事に生かしているのですか?

ズッケーリ:いろいろな形がありますが、私の場合は、TMが創造のプロセスを導いています。例えば、私にとって大変重要なことなのですが、私のチームとの関係や、一緒に働く人達との関係が幸せなものとなります。毎日が楽しいのです。その人達とはもう9~12年も一緒に働いていますが、楽しいから一緒にいるのです。何か創造的なことを行う上で、それは大変重要なことです。楽しんでいるときに、人は100パーセント、力を発揮できるからです。そのような環境で働いていると、より創造的になるので、斬新なファッションが生まれるのです。私のオフィスに来る多くの人は、まず最初に「このオフィスには素晴らしいエネルギーがある。」と言ってくれます。

──デヴィッド、これはあなたの経験にも当てはまりますか?

リンチ:ええ、当てはまります。私は、あるビジネス会議を思い出しました。多くの会社が、恐怖に基づいてビジネスを行っています。彼らは、恐怖が人を動かす原動力になると思っているからです。そのために、競争心をあおり、従業員はいつも自分の仕事が危いと感じています。彼らは、恐怖の中で生きているのです。そうした恐怖を家に持ち帰り、妻や夫はそれを感じ取って、家にいる小さな子供までそれが伝わります。それはまるで、職場で毒を受け取り、それを他の場所に撒き散らしているようなものです。それで従業員は、病気がちになったり、夜眠れなくなったりしているのです。すべてが悪い方向へと向かってしまいます。反対に、もし従業員が幸せなら、彼らはより生産的になり、より多くのアイデアを出し、会社のためにもっと働いてくれるでしょう。それは常識で考えればわかることです。

──これまであなた自身が作った作品を振り返ってみて、TMを始める前と後では、そうした作品に違った印象を受けますか?

リンチ:それほど違いはありません。作品を作っている間に、私がどのような状態だったか、ということが重要なのです。それについて考えると、まるで魔法のようです。振り返ってみると、私自身は、弱く、不安で、自信がなく、心配と疑いに満ちていました。うつ病ではありませんでしたが、時々憂鬱な気分になりました。それに、怒りに満ちていましたから、揺れる地面に立っているようなものでした。こうした仕事は人を殺しますよ。超越することによって、これを乗り越えることができるのです。

ズッケーリ:ファッション業界もそうです。よくわかります。

リンチ:ひどいものです! 誰も楽しんでいない!

ズッケーリ:いや、このようなビジネスのプレッシャーといったら、大変なものです。行っていることが、常に評価されるのです。時には公平に、時には不公平に。しかし、それを超越すれば、そこは大変素晴らしい場所となります。それによって、毎日違った形で人生を生きることができ、うまくやっていけるようになるのです。それだけでなく、何か批判を受けても、そこから自分を励ますような何かを引き出すことができるのです。

“Style.com” by Matthew Schneier

  

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