瞑想すると気楽になる。問題が依然としてあってもその重みがなくなるのだ。

長い間、私は美しい山の見える田舎の家を探そうとしていた。週末になると不動産屋と一緒にあちこちへ探しに出かけたが、気に入る物件はなかなか見つからない。探求の旅は徒労に終わり、そのたびに手ぶらで家に帰ってきた。しかし、今では自分は運がよかったのだと考えている。なぜなら、そのような田舎の家はもう必要ではなくなったからだ。

長距離の移動や、遠くの財産の管理や、土地所有のための煩わしい手続きなどに頭を悩まさなくても、一日に二回の休暇を楽しめる。特に、夕方の瞑想は私を元気にしてくれる。他の人達も報告しているが、石板に書いた字が拭き取られるように日中の疲れが取れていく。そして、そのリフレッシュした状態で、夕方からの活動を楽しむことができるのだ。

一人の患者がいる。彼のことをジェリーと呼ぶことにしよう。彼は忙しい経営者で、高額の利益のかかった会議を次から次へとこなす毎日をおくっている。彼の前には常に、大金の獲得または損失、懐柔すべき人々、交渉すべき取引などがある。彼は薬物治療を受けていたが、それにも関わらず不安やパニック発作を抱えていた。ジェリーには明らかに何か追加の援助が必要であると考えて、私はTM(超越瞑想)を勧めた。

一年後、彼は大きな安心を感じるようになった。そればかりか、不安に対する薬物療法も不要になった。彼は、瞑想中によくお腹がゴロゴロ鳴るのに気付く。「まるでお腹が私に、『忙しい中に休憩を与えてくれてありがとう。しばらくの間ストレスから解放してくれてありがとう。』って言っているようです」と彼は言う。

ジェリーの素晴らしい体験は、珍しいことではない。多くの瞑想者が、TM中には体や心からストレスが穏やかに解消されていくのを感じると言う。深いリラクゼーションの中にいると、様々な想念がかってに浮かんできては消えていく。そうした想念について、瞑想者は反発も心配も分析もしない。ただ、それがやって来て去っていくのにまかせる。そのような体験があった後で、瞑想から出てくると、どういうわけか前よりも気楽になる。問題は依然としてそこにあるのだが、その重みがなくなっているのだ。

よくあることだが、TMによってある問題をめぐる過度の感情が解消されると、物事の見通しがよくなる。その問題について、気分が前よりもよくなり正しい行動がとれるようになる。これはTMのもう一つの贈り物である。

──ノーマン・ローゼンタール著「超越瞑想 癒やしと変容〜精神科医が驚く効果と回復」より