瞑想を学んだ老囚人が体験についてこう言った「マス・アモール!(たくさんの愛だ)」

20年ほど前、あるTM教師が、中央アメリカの刑務所で瞑想を教えるプロジェクトに参加した。その刑務所は、スペイン征服時代に建てられた、かつての植民地総督の邸宅だった。建物は改造されているもののすでに廃墟に近く、中世の城砦さながら、分厚い石の壁が入れ子式に幾重にも並んでいた。

「そこの陰うつで重苦しい雰囲気は恐ろしいほどだった」と彼は回顧する。「三つめの壁を通り、四つめの壁を通り抜け、そして看守が最後の門を通してくれたとき、空を見上げると、屋根近くのかなり高いところに一つだけ、鉄格子のはまった小さな窓があった。そこから男の腕が突き出ていたんだ。男の手はひらいていて、腕は力の限り、空に向かって伸ばされていた。私が中庭を横切っているあいだ中、腕は微動だにしなかった。そこがいかに恐ろしい場所であるかを、それはどんな言葉よりも雄弁に物語っていたよ」。

内部はまさに、身の毛もよだつようなありさまだった。各監房は広々とした巨大な部屋で、一部屋に百人ずつ収容されており、ロープでできたハンモックが何段にも吊されていた。瞑想の指導のために用意された狭苦しい部屋は、床板に大きな割れ目がいくつもできている。見下ろすと、階下の監房に受刑者たちのひしめいているのが見えた。

「私たちはそこで大ぜいの囚人たちに教えた。彼らは非常に熱心に瞑想を学ぼうとしていた。それに、呑みこみもよかった。自分たちの置かれた状況と、TMがもたらす心の平安とが、あまりにも違いすぎるおかげでね。

私はすでに瞑想を学んだ最初の30人を集合させ、誰かその体験を話してほしいと頼んだ。全体がざわついたけれど、誰も申し出る者はない。すると、ホアン・ゴンザレスが手を上げたんだ。みんなはてんでにけたたましく笑った。

実はホアン・ゴンザレスは刑務所の中でも一番身分が低くてね。彼は年老いた農夫で、知恵遅れだと思われていた。首をうなだれながら、足をひきずって歩き、めったに口をきかない。私はゴンザレスに、『気にするな』と言った。『立ち上がって、瞑想でどんなことを感じるか、話してくれないかい』と呼びかけた。彼はゆっくりと起立し、自分の椅子によじのぼった。そして、両手を精いっぱい広げ、首を後ろへそらせ、こう叫んだんだ。『マス・アモール、セニュール、マス・アモール(たくさんの愛、もっとたくさんの愛)』ってね。私はこのときの情景を決して忘れないだろう。