デヴィッド・リンチ監督が映画と瞑想について語った16カ国ツアーのドキュメンタリー

今年、5月にデヴィッド・リンチ監督の新しいドキュメンタリービデオ「瞑想、創造性、平和」が公開された。そのドキュメンタリービデオは、デヴィッド・リンチ監督が、2年間にわたって行った世界ツアーを収録したもの。リンチ監督は、2007年から2009年の間に、16カ国をまわって、映画学校の学生や一般の人々に、彼がいま最も情熱を注いでいる話題──超越瞑想と、彼の映画、世界平和、リンチ財団に関する講演を行った。

いま、世界中どの国でもストレスが蔓延し、多くの人々がストレスに関係した病気──不安、抑鬱、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、薬物中毒に苦しんでいる。2005年に設立されたデヴィッド・リンチ財団は、科学的に実証されたストレス解消プログラム(超越瞑想を含む全体的な手法)を、学校、軍隊、病院、政府機関、刑務所に提供し、あらゆる年齢、あらゆる職業の人々が、苦境を克服できるように助けている。

超越瞑想とは、私たちの創造性を高め、成功をもたらし、幸福を生き、世界に平和をもたらすためのテクニックである。外側の世界で起きている現状をより良い世界に変えるためには、私たち自身の内側から変化が起こらなければならない。ストレスを抱えた子供たち、学生、ビジネスマン、戦争の退役軍人、刑務所の受刑者たちが瞑想するとき、彼らの人生は内側から変わる。そうした超越瞑想の効果は、ハーバード、スタンフォード、イェール大学など、一流の大学や研究機関で長い間、実証されてきた。

デヴィッド・リンチ監督は、1973年に超越瞑想を学んで以来、朝20分、夕方20分の瞑想を、一日も欠かさずに行ってきたと語る。映画のセットのなかで、また世界中を旅しているときも、彼は常に瞑想する時間を見つけてきた。瞑想のことを、彼は「内側に潜る」という表現で説明している。

「瞑想・創造性・平和」のドキュメンタリーは、典型的なリンチ流の映像に仕上がっている。彼自身が作曲した音楽をBGMに、抽象画のキャンバスの前で、リンチ監督が話している様子が、爽やかなモノクロの映像で撮影されている。

ビデオの最初に、美味しそうなドーナッツを瞑想に例えて、彼はこう述べていた。「実際に味わってみなければ、それがいかに甘いか、いかに良いものかわからないだろう。瞑想は、このドーナッツよりもずっと甘い体験を与えてくれる。生命の最も甘いネクターのような、純粋な至福意識の体験を与えてくれるんだ。」

映画監督、作家、画家、音楽家、ときには俳優として活躍するデヴィッド・リンチ監督は、真のアーティストだ。このドキュメンタリーのなかで、彼はエルサレム、ソフィヤ、キエフ、パラモ、リスボン、エディンバラなど様々な都市を訪れ、アーティストとしての考えを話し、あらゆる種類の質問に答えている。

例えば、「あなた自身の創造のプロセスを、あなたはどう表現するのか」といった質問から、「人生の意味とは何か」「どのように猿は人間になったのか」といった質問に、全くたじろぐことなく、優雅に答えている。

過去6年間に、デヴィッド・リンチ財団は、大都市の学校の学生、PTSDを患う退役軍人、投獄された受刑者、ホームレスたち、約20万人に、超越瞑想を学ぶための奨学金を提供してきた。

超越瞑想の創始者であるマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーは、個人の啓発と地上の平和という二つの目標を持っていたが、デヴィッド・リンチ監督は、その両方を実現したいと願っている。

原文・JULIE EAGLETON

■ドキュメンタリー「瞑想・創造性・平和」