家庭内暴力や虐待による、心の傷を癒すための第一歩

トラウマの体験に起因する深刻なストレスを回復させる方法として、超越瞑想が次第に認識されるようになってきた。トム・ノースは、最近出版した著書『True North(本当のノース)』の中で、家庭内暴力や幼児虐待の体験を乗り越えて、立ち直った自分自身の物語を語っている。そして、彼自身の心の傷を癒やす上で、超越瞑想が重要な役割を果たしたという。

幼児虐待は、アメリカで最も深刻な問題の一つである。それは、すべての民族、文化、宗教、教育など、社会のあらゆるレベルで起こっている問題だ。アメリカでは、毎日四人の子供が虐待によって命を落としている。米国幼児虐待国立センターは、毎年アメリカで50万人以上の子供達が、何かしら深刻な虐待を体験していると報告している。他にも多くの研究が、幼児虐待を受けた子供達は、成長後に鬱病、アルコール中毒、麻薬中毒、少年犯罪を起こす可能性が高いことを示している。以下は、彼のブログより引用。

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私は、幼児虐待という深刻な問題に対する人々の意識を高めることに取り組んでいる。子供の頃に受けた私自身の心の傷は日に日に回復しつつあり、ほぼ乗り越えることができたと感じている。そして、私は、他の犠牲者にも、立ち直るための方法があることを知らせたいと思っているのだ。

ハイム・ギノット博士(作家、教育家、臨床心理学者)は、「子供達は、まだ乾いていないセメントのようなものだ。そこに落ちたものは何でも、痕跡を残す。」と語っている。幼児虐待の犠牲者は全世界で何十万にものぼるが、その多くは気まずい沈黙でもみ消されてしまう。しかし、子供の虐待は、その子の一生に深刻な影響を及ぼす地球的な問題なのだ。

いくつかの研究は、肉体的、感情的、性的な虐待を経験した子供達は、一生にわたって心の傷跡が残ることを明らかにしている。そうしたストレスは、脳の初期の発達を妨げたり、神経系および免疫系の機能に障害をもたらすだけでなく、成長後の心臓病、癌、自殺の原因にもなっている。幼児虐待の犠牲者は、そうした危険にさらされているのだ。

では、一度、家庭内暴力や虐待を受けて、深い心の傷を負った人々は、そうした傷を癒やすために、どうしたらよいのだろうか?

もちろん、幼児虐待を予防することが最も大事なことだ。それが犠牲者を減らし、子供や家族の生活を改善する一番の希望となる。

しかし、不幸にもそうした問題が起こってしまった場合には、その犠牲者に何が起こるだろうか。虐待による心の傷跡は、その子の潜在意識に深く刻み込まれる。そして、その傷跡は次第に膿んできて、一生涯に渡って、その子の思考や行動に問題を引き起こすのだ。ある人々は、それを締め出そうとしたり、多くの人は薬品に頼って、何とか自分で治そうとする。犠牲者は、一日一日の生活に何とか対処して、うまくやっていこうとするが、やがて自分の惨めさに嫌気がさしてくる。そのとき、彼らは、自分の感じ方や行動の仕方を根本的に変えようと決意し、勇気を奮い起して救いを求めるのだ。そして、多くの人は、専門家による支援団体に助けを求める。

私の場合は、幸運なことに超越瞑想(英語で略してTM)を学ぶ機会を得た。そして、それは、幼児虐待から立ち直る第一歩となった。驚いたことに、瞑想を始めてすぐに、自分の感じ方に変化が起こったのだ。例えば、これまで私は非常に辛辣で怒りっぽく、他人を褒めることができなかったのだが、その理由は自分でもわからなかった。それが、瞑想を学んですぐに、他人のよいところを見つけて、それを褒めている自分に気がついた。瞑想を長く実践するにつれて、私はもっとリラックスしてきたようだ。毎回の瞑想が、すぐに腹を立てて嫌みを言う、私の皮肉な性質を改善していったように思える。そのうち、周りの人も私の変化に気づき、それを口にし始めた。他の人の目にも、私はもっとリラックスして、ストレスが少なくなったように見えたのだろう。実際、回復の過程が進むにつれて、自分自身のよい点にも気づくようになってきた。

超越瞑想の効果については、過去40年間に、200以上もの大学や研究機関で、数百件におよぶ科学的研究が行われてきた。そして、生理、心理、感情面の健康を改善する、広範囲に及ぶ超越瞑想の効果が実証されている。これらの効果は、私の場合のように、いつもすぐに現れるわけではないが、効果は確実に現れてくるものだ。

一つ心にとめておいて欲しいことは、超越瞑想は「実習」し続ける必要があるということだ。私はそれに気づいたので、今でもまだ毎日瞑想している。私の心の傷は、1日ごとに癒やされていくからだ。

原文・TM Blog