ワシントンDCの危険地域の学校に通う生徒たちが静かに座る

文・ジョージ・ラザフォード博士(ワシントンDC理想アカデミー校長)

ワシントンDCで麻薬問題が深刻になったのは1989年のことです。若者たちの間で殺し合いが始まり、ワシントンはこの国で第一位の殺人都市になりました。4、5年の間に、毎年平均して500件以上の殺人事件が起こりました。

私の学校の周辺でも多くの暴力事件が起こり、生徒の多くが影響を受けていました。わが校はワシントンDCの南東にあり、そこはこの地区の中で最も危険な区域と見なされていたのです。本校の生徒たちは二つの公営住宅団地の間を通って通学しなければならないのですが、対立する非行グループ同士の撃ち合いがそこで起こり、子供たちに流れ弾が当たりました。私はそこへ行って喧嘩を止め、生徒たちの安全を守ろうと努力しましたが、それでも子供たちを私の腕の中で死なせてしまいました。それはもう二度と体験したくないことです。

1992年、わが校の元生徒の一人が殺人で有罪を宣告され、電気椅子に送られました。別の元生徒は、人を撃とうとしてその弾が外れ、裏庭で孫娘と遊んでいたおばあさんに当たったために、懲役16年の刑を受けました。

私は、こうした若者たちを救うために何ができるだろうかと真剣に考えました。著名な物理学者で、超越瞑想の専門家であるジョン・ヘーゲリン博士にお会いする機会を得たのは、そのようなときでした。博士はわが校に来て生徒たちに話をしてくれました。私は超越瞑想のことをもっと知りたくなって、そのテクニックを学ぶことに決めました。

瞑想はとても心地良い

TMのセンターはタコマ・パークにありました。瞑想の指導がどのように行われるのかわからなかったので、私は少し不安を感じていました。ですが指導を受けた後は、不安になるなんて馬鹿げていたと思いました。瞑想がとても心地良かったからです。私が経験した事のなかでも最高のものでした。とても素晴らしいと感じました。

そして私は、35歳だった妻に、とにかくそれを学ぶべきだと言いました。彼女は高血圧の問題を抱えていたからです。彼女は信仰心の厚い人なので、超越瞑想はキリスト教の信仰と相容れないのではないかと少しためらっていましたが、そういうものではないと私は彼女に請け合いました。妻が瞑想をするのは私にとって重要なことでした。彼女には5人の姉妹がいましたが、そのうち55歳まで生きた人はいません。彼女の姉妹は皆、動脈瘤という同じ病気で亡くなりました。彼女の母親もそうでした。

妻は瞑想を学んだ後、それが宗教と無関係であることを理解したので、私たちの四人の子供たちにも学ぶように勧めました。家族全員が瞑想をはじめたときは、とても嬉しく思いました。それはとても素晴らしい経験でした。

他にも、瞑想は私にたくさんの恩恵をもたらしました。健康状態が良くなりました。学校でより多くの仕事がこなせるようになり、以前のように興奮し過ぎることがなくなったのです。教師たちはそのことに気づいて、こう言いました。

「校長先生、あなたはいったい何をしているのですか。私たちもそれをやってみたいのですが……」

徐々にですが、150人以上の生徒と職員の85パーセントが超越瞑想プログラムを学びました。私は「静かな時間」という時間枠を設けて、彼らが一緒に瞑想できるようにしました。朝の8時50分から9時10分までが静かな時間です。学校全体が静かになりました。生徒全員が超越瞑想を学んだわけではありませんでしたが、全員が「静かな時間」に参加しました。瞑想をしない人は、ただ静かに座っているか、本を読んだりしました。そして、私たちは、校内のストレスのレベルが著しく低下したことに気づきました。

子供たちが喧嘩をしなくなった!

静かな時間の後、午前中に喧嘩が起こらなくなりました。「騒ぎがちな」生徒たちでも、教室に行くとすぐに学業に取り組むようになりました。

午後にも3時10分から3時30分まで「静かな時間」を設けました。すると午後にも、校内だけでなく校外の街中でも子供たちが喧嘩をしなくなりました! 私はもう喧嘩を止めるための巡回をしなくてよくなりました。さらに、わが校のテストの成績が上がりはじめ、出席率が良くなり、教師たちの気が楽になりました。これはわが校で起こった最も素晴らしい出来事でした。

私が行ったことについて人々からよく尋ねられますが、私はただ子供たちのためになること、地域社会全体の生活の向上につながると思ったことをしたに過ぎません。

子供たちを救うために何かできることがあるなら、進んでそれに取り組まなければなりません。私たちは家でただ座っていることもできますし、ニュースを見ながら、あの子供たちはとてもかわいそうだと思うこともできます。けれど、私たちが進んでそれに取り組むまでは、何もしたことになりません。スラム地区の生徒たちは、他の人々と同じように、より良い生活を手に入れる権利があります。なぜ彼らは走り過ぎる自動車からの銃撃を恐れなければならないのでしょうか? 彼らが、誰かに悩まされたり何かを恐れたりしないで、下校し、眠り、勉強し、起床し、登校する、そんな普通のことを望んではいけない理由があるでしょうか。

私はワシントンDCの公立学校に35年勤務した後、1998年に退職しましたが、この心躍る仕事を止めることはできませんでした。今は、ワシントンDCに設立した私立学校「理想アカデミー」で教育の仕事を再開しました。わが校ではすでに多くの教師が瞑想し、生徒たちも学びました。私は子供たちに生き生きとして欲しいと思っています。学業成績を上げてやりたいと思っています。生活の質を変えてやりたいと思っています。私たちの願いはそれだけです。すべての人の生活の質を良くすることです。そして私は、超越瞑想プログラムによってそれが実現するのを見てきました。